社交

ざんねんな人間図鑑

水源

死にたい死にたい言っても仕方がなくてうざがられるだけなので、くだらない話をしよう。通学路でするりと鼻を通るのは田舎の匂いだ。葡萄に似た田舎の匂いがした。使用中止の古びた自動販売機には、黄色く変色したスポーツドリンクが入っている。ペットボトルの容器はぼろぼろぐしゃぐしゃにへこんでいて、朽ち果ててしまった自動販売機を何だかおごそかな気持ちになって見上げている。一生起き上がることはないのだろうに、なぜそこに置かれ続けているのか。片付けることにも金が要るのだろうか。明日ここから消えてなくなっていたら。それでも足は止めない、どうせ明日もそこにある。わたしも、そいつも、どうせ明日もそこに在ってしまうのだ。それならば今日特筆することもないと、大してまじまじとは見つめずに通り過ぎる。でもなんだか気になってしまう。引っ掛かったような、気付いたことへの罪悪感の気付きというか、佇まいから見て取れる静寂の未知というか、そんな感じ。
死なないで、よりも、明日なにする?と言われた方が嬉しいのは我儘だろうか。生きる前提の約束に居心地の良さを感じるのは我儘だろうか。そういう友人とくだらん話をして、何が面白いかも分からんままにただ笑って、なんかそんな日々を過ごしたい。あなたと友だちになりたい。みんなと友だちになりたかったはずだよ、わたしたちっていう生物は。