社交

ざんねんな人間図鑑

死損じた。

自分は他人から赦され続けてはならないという感情がなんとなく根底にあって、まぁそれなら仕方ないよなとか諦めながら、ウインカーも付けずに左折してきた車が遠くへ消えていくのを見つめる。いいこで真面目だった遠い昔の僕みたいなのが求められるこの世界で、人に気を遣って自分のエリアを狭め続けて生きるのはだるすぎて嫌になる。赤信号を踏み出そうとして、そこまでの勇気は出しておいて、やっぱり未練だらけで怖くてやめた。こんな情けない人間が、他人から赦されたいとはなんだ。本で読んだだけの知識の脳震盪のように、ぐらぐらと視界が歪む。朦朧としたまま電車に乗る。曖昧な完成で降りる。柔らかく意識だけが宙に浮く。旧友とのくだらない会話の末、なんとなく話を区切って帰路に着く。極めて非人間的な思考を抱え込みながら、人間的に誠実に日々を過ごしていることに理不尽な安堵を感じている。笑えてくるような怠惰な日々を描く。死に損ないが言葉を吐く。死に損なった日の言葉はいっとう切れ味がいい気がして気分がよくなる。薬のように依存させていく。自分の言葉に凭れ掛かり、錯乱して砕け散りそうな感情を文字として置き換えて見下ろす。若くして死んだ作家たちはなぜ美しいのか、と彼らを不甲斐なく羨んでは、人生の泥を口に押し込んで呑み干した。