社交

ざんねんな人間図鑑

好きな子ができたら

このまま全部溶けてなくなっていったら、僕はそれを良しとするだろうか。それとも消えてなくなってたまるものかとこの世に縋るだろうか。手すりのない崖っぷちで君を好きでいられるだろうか。好きだと伝えたら嫌いになれるだろうか。嫌われたら僕は生きていけないだろうな。
あなたが好きです。笑っていないようで笑っているふんわりとした横顔。素朴な髪型。僕よりよっぽど可愛いのに、僕と同じように自分の顔がきらいなところ。僕とおんなじで、きらいな食べ物がたくさんあるところ。僕と違って、ちゃんと美しいものがわかるところ。あなたとずっと友達でいたい。
あなたが嫌いです。僕をのけ者にしたこと。僕に嘘を教えたこと。冷めた目で、尖ったことばで胸を刺すこと。僕を好きになってはくれないこと。
あなたは美しい。
僕は醜いものしか見えない。
よって、僕にはあなたが見えない。
きっと優しい顔をしている。
きっとこわい顔で見ている。
人間の二面性も、裏表も、酸いも甘いも、辞書に載っていたらいいのに。
冬には夏が恋しくなって、夏には冬が恋しくなる。
夏の香りを、冬の息を呑み込んで、おいしいねとあなたを見つめたい。
明日になりたい。
ずっと今日の淵にいられたら。